段 | 原文 | パロディ |
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序 (1991年作) |
つれづれなるままに、日暮らし、硯に向かひて、心に移りゆく由無し事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。 |
つれづれなるままに、日暮らし、他人に向かひて、心に移りゆく恨み事を、そこはかとなくあたり散らせば、あやしうこそ心地よからめ。 ★…とは言ってみたものの、自分がやられるといやですよね~。みなさんも嫌われないように気をつけてくださいね。 |
三十六 (1991年作) |
「久しく訪れぬころ、いかばかり恨むらんと、我が怠り思ひ知られて、言の葉なき心地するに、 女の方より、『仕丁やある。一人』など言ひおこせたるこそ、ありがたく、うれしけれ。 さる心ざましたる人ぞよき」と人の申し侍りし、さもあるべきことなり。 |
「久しく返さぬころ、いかばかり恨むらんと、我が貧乏思ひ知られて、言の葉なき心地するに、 暴力団の方より、『金やある。返せ』など言ひおこせたるこそ、あさましく、おぼつかなかりけれ。 さる心ざましたる人ぞあしき」と人の申し侍りし、さもあるべきことなり。 ★ご利用は計画的に! |
四十五 (1991年作) |
公世の二位の兄人に、良覚僧正と聞こえしは、極めて腹あしき人なりけり。 坊の傍らに、大きなる榎の木のありければ、人、「榎木僧正」とぞ言ひける。 この名然るべからずとて、かの木を切られにけり。その根のありければ、「切りくひの僧正」と言ひけり。 いよいよ腹立ちて、きりくひを掘り捨てたりければ、その跡大きなる堀にてありければ、「堀池僧正」とぞ言ひける。 |
公世の二位の兄人に、良覚僧正と聞こえしは、極めて腹あしきオタクなりけり。 坊の傍らに、綾波レイのフィギュアのありければ、人、「エヴァンゲリオンオタク」とぞ言ひける。 この名然るべからずとて、かのフィギュアを捨てられにけり。その箱より月野うさぎフィギュアのパンフの出でければ、「セーラームーンオタク」と言ひけり。 いよいよ腹立ちて、パンフを破り捨てたりければ、その内よりナウシカの原画注文書の出でければ、「ナウシカオタク」とぞ言ひける。 ★まあ、オタクはどこまでもオタク、と・・・。でも、ナウシカとセーラームーンを同格に考えてよかったかなぁ?? |
五十二 (1991年作) |
仁和寺にある法師、年寄るまで石清水を拝まざりければ、心憂く覚えて、あるとき思ひ立ちて、ただひとり、徒歩より詣でけり。 極楽寺・高良などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。 さて、かたへの人にあひて、「年ごろ思ひつること、果たし侍りぬ。聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ。 そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参ることこそ本意なれと思ひて、山までは見ず」とぞ言ひける。 少しのことにも、先達はあらまほしきことなり。 |
仁和寺にある法師、年寄るまで東大を拝まざりければ、心憂く覚えて、あるとき思ひ立ちて、ただひとり、徒歩より詣でけり。 お○の水、○田塾などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。 さて、かたへの人にあひて、「年ごろ思ひつること、果たし侍りぬ。聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ。 そも、参りたる人びとみな女なりしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、男がただひとり居るはいと恥づかしと思ひて、早々しく罷りき」とぞ言ひける。 少しのことにも、先達はあらまほしきことなり。 ★東大(本郷)とお○の水は同じ文京区内だからともかく、○田塾を「少しのこと」では済ますのは・・・やっぱり無理があるね・・・ |
八十九 (1998年作) |
「奥山に、猫又といふものありて、人を喰らふなる」と人の言ひけるに、「山ならねども、これらにも、猫の経上がりて、猫又に成りて、人獲ることはあなるものを」と言ふ者ありけるを、 何阿弥陀仏とかや、連歌しける法師の、行願寺の辺にありけるが聞きて、独り歩かん身は心すべきことにこそと思ひけるころしも、 ある所にて夜更くるまで連歌して、ただ独り帰りけるに、小川の端にて、音に聞きし猫又、あやまたず、 足もとへ寄り来て、やがてかきつくままに、頸のほどを喰はんとす。 肝心も失せて、防がんとするに力もなく、足も立たず、小川へ転び入りて、「助けよや、猫又よや、猫又よや」と叫べば、 家々より、松ども灯して走り寄りて見れば、このわたりに見知れる僧なり。 「こは如何に」とて、川の中より抱き起こしたれば、連歌の賭け物取りて、扇・小箱など懐に持ちたりけるも、水に入りぬ。 希有にして助かりたる様にて、這ふ這ふ家に入りにけり。 飼ひける犬の、暗けれど、主を知りて、とびつきたりけるとぞ。 |
「奥山に、リングといふビデオありて、人を呪ふなる」と人の言ひけるに、「山ならねども、これらにも、貞子なる女の経上がりて、ビデオに成りて、人殺ることはあなるものを」と言ふ者ありけるを、 何阿弥陀仏とかや、連歌しける法師の、行願寺の辺にありけるが聞きて、ビデオ見ん身は心すべきことにこそと思ひけるころしも、 ある所にて夜更くるまでビデオ見て、ただ独り帰りけるに、井戸の端にて、音に聞きし貞子、あやまたず、 足もとへ寄り来て、やがてかきつくままに、頸のほどを喰はんとす。 肝心も失せて、防がんとするに力もなく、足も立たず、井戸へ転び入りて、「助けよや、貞子よや、貞子よや」と叫べば、 家々より、松ども灯して走り寄りて見れば、このわたりに見知れる僧なり。 「こは如何に」とて、川の中より抱き起こしたれば、「リング」の小説取りて、「らせん」「ループ」など懐に持ちたりけるも、水に入りぬ。 希有にして助かりたる様にて、這ふ這ふ家に入りにけり。 囲ひける女の、暗けれど、主を知りて、とびつきたりけるとぞ。 ★1991年時点でどうしてもパロディのネタが思いつかなかった段ですが、1998年になってようやくできました。 ありがとう貞子様! |
百四十四 (1998年作) |
栂尾の上人、道を過ぎ給ひけるに、河にて馬洗ふ男、「あしあし」と言ひければ、上人立ち止まりて、 「あな尊や。宿執開発の人かな。『阿字阿字』と唱ふるぞや。 いかなる人の御馬ぞ。余りに尊く覚ゆるは」と尋ね給ひければ、 「府生殿の御馬に候」と答へけり。 「こはめでたきことかな。阿字本『不生』にこそあなれ。うれしき結縁(けちえん)をもしつるかな」とて、感涙を拭はれけるとぞ。 |
栂尾の上人、道を過ぎ給ひけるに、河にて雑魚釣る男、「しめしめ」と言ひければ、上人立ち止まりて、 「あな怪しや。署名勧誘の人かな。『氏名氏名』と唱ふるぞや。 いかなる人の御竿ぞ。余りに怪しく覚ゆるは」と尋ね給ひければ、 「府生殿の御竿に候」と答へけり。 「こは怪しきことかな。氏名『不詳』にこそあなれ。怪しげなる結縁をもしつるかな」とて、感涙を拭はれけるとぞ。 ★「不詳」は旧仮名遣いでも「府生」と同じ音です。うまく合ってよかった。 |
百八十二 (1998年作、 2021年改) |
四条大納言隆親卿、乾鮭といふものを供御に参らせられたりけるを、「かくあやしき物、参る様あらじ」と人の申しけるを聞きて、大納言、「鮭といふ魚、参らぬ事にてあらんにこそあれ、鮭の白乾し、何条ことかあらん。鮎の白乾しは参らぬかは」と申されけり。 |
四条大納言隆親卿、乾蛙といふものを供御に参らせられたりけるを、「かくあやしき物、参る様あらじ」と人の申しけるを聞きて、大納言、「蛙といふもの、参らぬ事にてあらんにこそあれ、蛙の白乾し、何条ことかあらん。蛅の白乾しは参らぬかは」と申されけり。 ★原文の魚偏の漢字を虫偏に変えただけという、原文との一致率が極めて高い作品です。元は「鮭」だけを変えていましたが、2021年に「鮎」も変えてみました。 「蛅」に訓読みはありませんが、意味を踏まえて勝手に読みがなをつけました。 |
二百四十三 (1998年作) |
八つになりし年、父に問ひていはく、「仏は如何なるものにか候ふらん」といふ。 父がいはく、「仏には、人の成りたるなり」と。 また問ふ、「人は何として仏には成り候ふやらん」と。 父また、「仏の教へによって成るなり」と答ふ。 また問ふ、「教へ候ひける仏をば、何が教へ候ひける」と。 また答ふ、「それもまた、先の仏の教へによりて成りたまふなり」と。 また問ふ、「その教へ始め候ひける、第一の仏は、如何なる仏にか候ひける」といふとき、父、「空よりや降りけん。土よりや湧きけん」と言ひて笑ふ。 「問ひ詰められて、え答へずなり侍りつ」と、諸人に語りて興じき。 |
八つになりし年、父に問ひていはく、「数学は如何なるものにか候ふらん」といふ。 父がいはく、「数学とは、数の学と成りたるなり」と。 また問ふ、「数は何として学には成り候ふやらん」と。 父また、「数学者の教へによって成るなり」と答ふ。 また問ふ、「教へ候ひける数学者をば、何が教へ候ひける」と。 また答ふ、「それもまた、先の数の学によりて成りたまふなり」と。 また問ふ、「その学となり候ひける、第一の数は、如何なる数にか候ひける」といふとき、父、「一にやありけん。二にやありけん」と言ひて悩む。 「問ひ詰められて、逆ギレし侍りつ」と、諸人に語りて興じき。 ★「興じき」って・・・最悪な親父やな(笑) 親のみなさん、子供の言葉には真正面から向き合いましょう! |
二百四十三 (2021年作) |
(同上) |
八つになりし年、父に問ひていはく、「鬼は如何なるものにか候ふらん」といふ。 父がいはく、「鬼には、人の成りたるなり」と。 また問ふ、「人は何として鬼には成り候ふやらん」と。 父また、「鬼の血によって成るなり」と答ふ。 また問ふ、「血を与へ候ひける鬼をば、何が鬼にし候ひける」と。 また答ふ、「それもまた、先の鬼の血によりて成りたまふなり」と。 また問ふ、「その血を与へ始め候ひける、第一の鬼は、如何なる鬼にか候ひける」といふとき、父、「上弦の壱にやありけん。弐にやありけん」と言ひて笑ふ。 「問ひ詰められて、え答へずなり侍りつ」と、かたへの人に語りて興じき。かの人、名をば無惨となむいひける。 ★パパー! 逃げてーー!! 2021年1月当時人気のマンガ/アニメ『鬼滅の刃』が元です。 |
段 | 原文 | パロディ |
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一 |
春はあけぼの。
夏は夜。
秋は夕暮れ。
冬はつとめて。 |
春は禿げ者。
夏はツルっ。
秋は憂鬱。
冬は (髪を) 求めて。 |
段 | 原文 | パロディ |
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冒頭部分 |
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。 娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。 |
試験校舎の鐘の声、授業無情の響きあり。 学生諸君の顔の色、愚者必睡の理をあらはす。 |