自宅出産物語 : その 3
「その 2」からの続きです。今回が最終回です。
<産後>
夜が明けてからは大忙し。まずは出生届を出さなければ。あと会社にもいろいろ提出しないと。出生届って身長体重も記入するのか。病院で聞いてこないとね。お昼は太郎殿のお見舞いに。ミルクを飲んだばかりで、うつぶせに寝かせられていました。あ、目を開けてる。おとうさんとおかあさんですよ。保育器の中に手を入れて、なでなで。でも、あんまりドアを開けてちゃいけないような気がして、ちょっとだけでがまんがまん。帰ったら助産師さんに乳房マッサージなどのケアをしてもらったり。初乳ってほんとに黄色いなあ。とろっとしてますね。
太郎殿を見舞いに行くと、酸素吸入器はついていなかったので、ひとまず呼吸は落ち着いたようです。よかったよかった。保育器の中なので抱っこすることもできず、いきなり「子を送り出した親」のような気分を味わった気がします (早い早い ^^;)。
搾乳のしかたを教わって、小さいカップにせっせと溜めていきます。初めて作った冷凍母乳を病院へ持って行きました。10ccを哺乳瓶からおいしそうに飲んでくれたときは嬉しかったです。母乳の出はとても順調に増えていきました。量があるとけっこう時間がかかり、体を屈めて手を動かし続けるのが大変。でも太郎殿が待ってるもんね。おかーさんはがんばるぞ。
お産のときは出血もほとんどなくて体の回復は早かったけれど、さすがに足腰は弱ってるのが自分でもわかります。しばらく病院へ通うことになるので、車椅子をレンタルしました。病院でも借りられるけど、やっぱり自分用に 1 台あると便利。夫に押してもらえば買い物にも行けるし。お見舞いの帰り、夜涼しくなってからは、病院から自宅までのんびり押してもらうこともありました。
妻の産後の状態についてはあちこちで驚きの声があがっていました。普通は腰かけて座るのさえ苦痛らしいですが、立って歩くこと以外はごく普通の生活をしていました。太郎殿が少し苦痛を背負っていってくれたのではないか、と後で 2 人で言っていました。こんな子供が生まれてきてくれたことを、親としては感謝しなければいけませんね。
太郎殿は毎日順調に回復し、3 日目には保育器を脱出。点滴も酸素チューブも外れました。お風呂に入れてもらった太郎殿の髪はほわんほわんで気持ちいい〜。おむつ替えも、だっこにも慣れてきました。沐浴は・・・おとうさんにお任せしちゃいましょう (笑)。
困ったのは授乳。せっかく直接おっぱいをあげてもいいことになったのに、太郎殿がまったくおっぱいを受け付けてくれません。なかなかくわえられず、しまいには横抱きにしただけで大泣きするので、おなかを空かせたままの太郎殿と一緒に授乳室を出てきてしまうのでした。哺乳瓶に慣れすぎたのかなぁ。でもうちに帰ったら哺乳瓶ないんだからね (-_-;)?
入院から約 2 週間が経過して、ようやく退院。今後は検診でお世話になります。引き続き経過観察は必要みたいだけれど、まぁ元気なので良しとしましょう。
いよいよ親子 3 人での生活。これまでは太郎殿の世話は病院にまかせてましたけど、これからは自分でやらないといけません。自然と気合が入ります。むしろ入りすぎていたかもしれません。
さてと。相変わらずおっぱいを飲んでくれません。おかしいな、助産師さんが来たときはすんなりくわえてくれたのに。仕方なく、カップに搾乳して飲ませてみたり。点滴みたいな器具を使ってチューブから吸わせてみたり。夜中、50cc 飲ませるのに 1 時間半かかったときは本当にぐったりしてしまいました。その後、なんとか直接飲んでくれるようになったと思ったら、乳首が切れてしまったり。添い乳も最初はうまくできなくて、太郎殿が怒って泣いてさらに飲めなくなったり (号泣)。ちゃんと飲めるようになったのは、数日経ってからでした。
初めのうち、夜は良く泣きました。2 時間とか 3 時間とか 5 時間 (!) とか。太郎殿ってこんなに泣く子だったっけ? おむつも替えた、おっぱいもあげた、なのになんで泣きやんでくれないのーーー?
実はやや便秘気味で、出るものが出ないことが原因だとわかりました。うんちが出なかったり、おならが出なかったり。なぜわかったかというと、出たら泣きやんだからです (そのまんまだ ^^;)。この子が苦しそうな泣き方をする場合はまず便秘と思って間違いない、・・・と気付くまでには実に 3 日ぐらいの時間を要しました。
太郎殿が退院して3日後、早くも心身ともにへとへとになってしまったので、実家の母にヘルプを要請。夫の両親も、太郎殿の顔を見に来てくれました。この頃はとにかく誰か家にいてほしかったので、とてもありがたかったです。母には週に 3〜4 日ずつ合計 3 回も上京してもらいました。赤ちゃんの扱いには一日の長がありますね。「泣いたってほっときゃいいの♪」そんなアバウトなんでいいんですか (@o@;)! おかげでちょっと気が楽に。
母が帰ったあとはどうしよう・・・と思っていたのですが、まあ、なんとか、なるものですね。最初は太郎殿が泣き出したら夫と私のどちらかがダッシュしていたのが、ピコピコ泣いてても待たせるくらいの妙な余裕ができました。後から「ごめんねごめんね」と抱っこしてあげるのですが、一度、ご飯を作っている間ずっとほったらかしにしていたら、泣き疲れた太郎殿の耳に涙がたまっていたことが。このときばかりは本当にごめんねーと思いました・・・。おっぱい飲みながら眉間にシワよせてるし。目がなんか怒ってるし。すんません・・・。
だんだん太郎殿の扱いに慣れてきたのは確かですね。どのくらいなら泣かせておいても大丈夫かという加減が何となくわかるようになってきました。あとは太郎殿自身が成長していることも大きいと思います。太郎殿はいろんなことができるようになってきましたから、泣いたときの対処法も少しずつふえていきましたよ。そうしたら、太郎殿はいろんなことをしてくれるお父さんになつくようになって、お母さんは少し嘆いています (笑)。
そんなある日、太郎殿をだっこしていたら、太郎殿がにこっと笑ったのです。え、いま笑ったよね? そしたら再び「にこっ」。きゃーっ、かわいいー! これからどんどん表情が豊かになるんだね。太郎殿は成長しているのだね。おかーさんも成長するよ。
おとーさんも成長するよ! (^ー^)
<おわりに>
まだまだ書ききれていないこともあると思いますが、ひとまずこんな感じで。妊娠・出産とこれまでの赤ちゃんとの生活をなんとかやってこられたのは、ひとえに夫の協力の賜物と言えるでしょう。感謝感謝。
いえいえどういたしまして。自宅出産は私達にとっては未知の領域でしたが、妻にとっても、また私にとっても、一番落ち着く環境で出産を迎えられたことはよかったと思います。何より、出産を自分のこととして考えることができ、さらに生まれた瞬間から太郎殿を「この家の新しい家族」として見ることができたように思います。
母親業は始めたばかり。これからの育児について不安が全くなくなったわけではありませんが、太郎殿が泣くたびにドキッとしていた以前よりは、確実に良い状況だと思います。
太郎殿が生まれる前は、夫婦 2 人でなんとかやっていこうと思っていたのですが、実際生まれてみると、みんなの助けなしではどうにもならないこともあるなと痛感しました。これからも、いろんな人のお世話になりながら太郎殿は育っていくのでしょうね。
一番助けになっているのは太郎殿自身の成長かもしれません。不慣れな親に、この子が耐えられるようになってきたのではないかな、と (笑)。親は子供に親にしてもらっているのだ、と聞いたことがありますが、まさにその通りですね。無事な成長をとげていることを、私たちは太郎殿に感謝しなければいけません。
ところで、自宅出産についてですが、病院以外のところで産むというのは「危険な行為」に見えるかもしれません。現に太郎殿は出生直後から入院することになってしまいました。でも、私は病院で生まれましたけど母子ともに危険な状態になりました (特に母)。吸引分娩で母体に無理がかかったのかもしれません。それを考えると、妻が出産直後から (異常なまでに ^^;) 健康ぶりを発揮していたのは、会陰切開もせずあくまで自然分娩にこだわった成果といえるのかもしれません。決してリスクばかりの行為ではないということは、ちょっとここで強調したいと思います。
別の日の「ひとりごと」でも書きましたが、妊娠中の経過が順調で、助産師さん、病院、そして家族との連携がちゃんととれているのなら、自宅出産は決して悪い選択ではない、というのが、私ども夫婦の感想です。自宅出産をお考えのみなさまにとって参考になれば幸いです。
(おわり)